集団と個

霧の濃い夜だった

マレーシアはジョホールバル郊外の開発地で撮影していた
辺りに人の気配は無く、遠くの方に雲に写った都市の灯が見える

無限に広がる荒野
虫や両生類の鳴声
途切れた道路
倒れた電柱
配線がむき出しとなった変電設備

全ての要素が恐怖となって襲いかかる


人影を見た
こんな場所に人が居るわけがない

暗闇から
草をかき分け近づいてくる

現場の作業員だろうか
ホームレスだろうか

3mほど近づいてもまだ見えない


近くの犬が吠えた
威嚇されている

しかしながら人影の存在に縛られて動く事が出来ない

人影は最後まで動かなかった

30秒ほどの短い出来事だが
永遠に感じれらた

幽霊は信じないのだが、考えを改めようか



私と人影と犬
その三者がミクロの世界で渡り合う

神はこの出来事を知っているのだろうか


確実にそこに存在するモノ
あの時、カメラのシャッターを切っていれば何が写ったのだろうか

ミクロの世界
広い荒野のただ一角で起きた出来事


0コメント

  • 1000 / 1000